月ごとに観た映画の鑑賞録です。15日で前半と後半に分けています。
映画館、DVD、ネット配信のGYAOと、すべて混こぜです。
観る映画は監督で決めます。
評価は四段階で、
◎:愛した映画。絶対に映画館で観たいし、ネットでの再配信は必ず観る。
〇:機会があれば映画館でみたい。ネットの再配信があれば優先して観る
△:あまり面白味を感じなかった。積極的には次回は観ようとはしないかも
✕ :もう観返さない目印。しかし監督には関心があるから、今後、評価が変化するかも。
今回は2022年7月前半の観賞録です。
2022年7月前半の映画鑑賞録
タイトル | 監督 | 評価 | 一言 | 鑑賞日 |
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PLAN 75 | 早川千絵 | ◎ | コミカルにもサスペンスにも表現できる人類の選別というテーマを、最も深刻な表現で映像化した作品。 迷い中途半端な男と決断し実行する女という性差。画面の奥はあの世、手前はこの世。 主人公はラストで奥のあの世からこの世へ逃げた。その中間を、踏切を通っていく電車のように、介護士が自転車で走る。 青い廊下に青いカーテン、そこに見えている青い鉄骨がこの制度の終末感を増幅している。 | 2022/07/09 |
地獄の警備員 | 黒沢清 | ◎ | サムライミが陽のリズムへと昇っていったのに対し、黒沢監督は陰の底へと落ちていく道を選んだ。その原点は共にホラーであり、アメリカ50年代の刑事物。スィートホームと決別し、数年後のCUREから始まる巨匠への道の芽吹きが感じられる。監督を知るにおいて外せない作品。 | 2022/07/06 |
赤ちゃん教育 | ハワード・ホークス | ◎ | 俳優の素早い動きが強引に物語を進行させていくリズム感。登場人物が増えるごとに発生するトラブルが大きくなる、その積み重ねはネタの増幅に似ている。スクリューボールコメディの傑作 | 2022/07/04 |
峠 最後のサムライ | 小泉堯史 | △ | 文字の記述を追っただけの映像。手つかずの自然、その中で暮らす人々の生き様などを描くまでに至らず。映像詩になれたろうに。カット割りが多い。主役以外の役者も活かされておらず。役所広司がいなければ凡庸に堕ちていた。 | 2022/07/01 |
映画を観るのも一苦労の暑さ?
1週間で2本計算と、鑑賞数が少なかった。映画も意識的に観ようとしないと、ただ一日が過ぎていくだけになりがちだ。
40度というこの異様な暑さだと、頭が働かない。部屋にいても、アイスノンで頭を冷やし続けている。映画館へ行くのも一苦労だ。
もはや、クーラーで暑さをしのぐという考え方は適していないのでは?と思いもする。建物の構造や素材、空気を冷やす方法など、多角的な暑さ対策に取組む時代に入ったのかもしれない。
お勧め映画
『赤ちゃん教育』
人物があちこち動き、物語が必死についていこうとする。そう感じさせるほど、登場人物のキャラクターが魅力的で躍動感に満ちている。
映画館の大スクリーンで大勢の観客と一緒に観るからこそ、その面白みを楽しめる一作である。
コメディのこの流れにはビリー・ワイルダーが、さらに日本では三谷幸喜へと繋がるが、映像のリズム感は輸入しなかった。
ここは監督の生理が大きく関わる点なので、技術でどうにかなるものではないが。
人物に品があり、会話が強引でかみ合わずとも流れるように進む。
顔のアップもシーンを切り刻む編集もなく、落ち着き安心して物語を楽しめるスクリューボール・コメディの傑作。
『地獄の警備員』
画面にはオリジナルビデオっぽさが漂い、その画像の粗さがデジタルとは違う恐怖感を抱かせる。
『スィートホーム』で伊丹十三のマスコミ性に自分を抑制した黒沢清監督だったが、『地獄の警備員』では、その鎖を断ち切って自分の指向性を追求していこうとする覚悟が垣間見られる。
何とも言えない、そこにある不気味さ、暴力、あの世感は、この作品から芽を出しはじめたと言えるだろう。
ホラーのみならず、ドラマや刑事物など、様々なジャンル映画をこなしながらも、自身の無意識的な感性とも言うべき持ち味を発揮できる監督であり、日本の貴重な芸術家である。
『PLAN 75』
現時点でDVDや配信はされていないため、紹介できない。
深刻に考えてしまいがちな内容だが、映像表現として十分に楽しめる作品だ。
長く上映されて、人の目に触れ続けられてほしいと思う。
より詳細な考察をこちらに書きました。
映画『PLAN 75』の考察を読む