映画:鑑賞録(2022年6月後半)

月ごとに観た映画の鑑賞録です。15日で前半と後半に分けています。
映画館、DVD、ネット配信のGYAOと、すべて混こぜです。
観る映画は監督で決めます。

評価は四段階で、

今回は2022年6月後半の観賞録です。

2022年6月後半の映画鑑賞録

タイトル監督評価一言鑑賞日
ベイビーブローカー是枝裕和オープニングの土砂降りが”潤い”を、逆に日照りは乾きを感じさせた。全体として雨上がりが印象的だが、その雨は冒頭の土砂降りの名残か2022/06/29
青いパパイヤの香りトラン・アン・ユン×内省的だが人物の内面にまでは至らず。自然さを望んだろうが、枠内での人物の動かし方が作為的に写るのは演出不足。同時代の香港や台湾の作品レベルとは程遠い。映像はキレイ。カメラマンは監督とは映画学校の同窓生のフランス人。最近では『MINAMATA』など世界的に活躍。2022/06/28
アポロンの地獄ピエル・パオロ・パゾリーニ赤い土と乾いた空気の砂漠を歩く人物は、干からびた心に潤いを求めて彷徨っているよう。アメリカだったら『イージーライダー』。西洋神話が元だが、映画としては極めて個人的で作家的。2022/06/27
極楽特急エルンスト・ルビッチ気品に満ちた衣装、美術。性格をさり気ない仕草で見せる役者。彼らを魅力的に写す撮影。大型/小型・四角/丸という人物とセットの特徴に見える相関関係は、機械文明の到来であった当時の背景を彷彿とさせる。2022/06/22
奇跡の丘ピエル・パオロ・パゾリーニ一つの視点(カメラ=監督パゾリーニ)から撮られていることが伝わってくる映像。斜面の村は、2000年前から変わらずそこにあったかのよう。物語と映像の装飾が皆無で、監督の解釈による詩のような映画2022/06/22
ストロベリーナイト佐藤祐市2時間超えても15分長くして、主役と周囲の相関、二人の葛藤を丁寧に描くとよかった。照明が印象的。饒舌な音楽はドラマ仕上がり。監督が自らの意図をスタッフに告げ、それに応える形にする製作であれば、深みある作品になっただろう。2022/06/21
リグレッションアレハンドロ・アメナーバル×過去スリラー映画の模倣に終わっている。模倣から独自の表現という創造に至っていない。2022/06/20
トップガンマーヴェリックジョセフ・コシンスキー×顔と戦闘機のアップばかり。懐メロ的なストーリーはまだしも、相変わらずな軍人の性格は時代錯誤?ハンス・ジマーの音楽も魅力に欠ける。監督の演出意図もない。トム・クルーズでなければヒットとは無縁の作。だがこの作品は、映画産業がコロナの影響から復帰するために、世界的なヒット作にならなければいけない。2022/06/16

映画を決めるもの

『トップガンマーヴェリック』も『青いパパイヤの香り』も、世間一般の感想評価とは真逆になってしまうが、仕方がない。

両作ともに、制作者は酔いしれているのだろう。限界を超えるとか、郷土愛といったものに。だがそれらが、視覚的な魅力になっていない。
トニー・スコットのビート感、ホウ・シャオシェンの純粋さが、如何に新鮮でワクワクさせたかをつくづくと再認識させるだけの位置にとどまっている。

端的に言えば、映画の出来は監督で決まる。

お勧め映画

『極楽特急』

俳優、台詞、美術、照明、カメラ。映画を成立させている要素全てを用い、映画を視覚的な魅力にあふれさせたのがエルンスト・ルビッチ監督。
かつ時代背景を踏まえた物語によって、社会性を作品の土台としてもいる。常に作品を観返したくなる監督の一人。

ここでお勧めしている以外にも、『生きるべきか死ぬべきか』、『天国は待ってくれる』などの傑作も多い。
映画を堪能する経験を教えてくれる貴重な監督である。


『奇跡の丘』

宗教的なテーマが多いためか、日本人にはとっつきにくく、また鑑賞する機会も少ないパゾリーニ監督。こうしてネット配信で観られるのは有り難い限りだ。

この世界の歴史との個人的な関わりを映像化する映画監督は、表現が個人に託されていた80年代までは数多くいただろう。
しかしビッグビジネス産業のコンテンツという色合いが濃くなった現代では、もはや皆無かもしれない。
機器のデジタル化に伴い、少ない人数や機材でも映像表現が可能になったいま、極めて個人的な表現を魅せるパゾリーニは一つの手本となるのではないだろうか。
コンテンツ映画とは違う、表現としての映画の可能性を改めて感じさせる監督である。


『ベイビー・ブローカー』

まだDVDや配信などされていないので、それらを紹介することはできない。
是枝監督作の俳優は、演技を忘れたかのようにそこにいる。男性も女性も、その時点で自分が置かれている社会的な立場のなかでつつましやかに生きている。
変わらずに重要な役割をしているのが子どもだ。今作でも湿りがちな内容をカラッと乾かしている。

より詳細な考察をこちらに書きました。
映画『ベイビー・ブローカー』の考察を読む