映画:鑑賞録(2022年5月前半)

月ごとに観た映画の鑑賞録です。15日で前半と後半に分けています。
映画館、DVD、ネット配信のGYAOと、すべて混こぜです。
観る映画は監督で決めます。

評価は四段階で、

今回は2022年5月前半の観賞録です。

2022年5月前半の映画鑑賞録

タイトル監督評価鑑賞日
この子の七つのお祝いに増村保造×2022/05/14
エール!エリック・ラルティゴ2022/05/10
Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのちヴィム・ヴェンダース2022/05/02
昼下りの情事 古都曼陀羅小沼勝2022/05/01

“人種のらしさ”が分かる2本の映画

観賞本数が少なかったことに自分でも驚く。忙しかった訳ではないが、大型連休になったことで普段とは違った生活リズムになったからかもしれない。

2022年アカデミー賞で主要な部門を獲得した『CODA』は、フランスで製作された『エール!』を脚色した映画だ。
この二作品には、フランス人とアメリカ人の違いが非常によく表れている。日本人からすればどちらも肌の白い西洋人として同じに見えてしまうが。
しかし彼らの自立心と家族への思い方には全く異なったところがある。その違いを知るには、格好の作品と言えるだろう。
近いうちに、その比較について一文書いてみたいと考えている。

増村保造監督は、この作品が遺作となってしまったのは残念で仕方がない。かつて伸びやかに映像表現を堪能していた監督のカケラも見られない、他の平凡な監督で構わない程度の内容だ。
自身にと言うよりも、監督をサポートする製作陣の変化が原因なのかもしれない。

お勧め映画

『エール!』

この作品、実話のように思えるが製作者たちの創作らしい。それだからか、父や母は役者が聾唖者を演じていて、彼らは役作りとして手話を覚えたらしい。
耳の聞こえない人を集めた試写会では、手の使い方や伝達内容など細かな点で正確さに欠けていたと指摘されたという。

舞台となる小さな村や人物の設定は、いかにもフランスらしい。家族の繋がりや地域の共同体を大切にし、それを全身で表現する。
体制に断固として立ち向かう姿は、市井の人々の憤懣が生んだ団結心が反乱となったフランス革命を思わせる。以来、フランス人が脈々と受け継いできているアイデンティティなのだろう。

世界都市パリとは全く違う、フランスらしさを感じられる映画である。

『コーダ あいのうた』

『エール!』を脚色してアメリカで制作された作品で、アカデミー賞では脚色賞のほか作品賞、助演男優賞を獲得した。
父、母、本当に耳が聞こえない俳優で、母親役のマーリー・マトリンは聾唖者がキャスティングされないのなら自分は出ないとまで言ったらしい。
1986年に『愛は静けさの中に』でアカデミー主演女優賞を受賞した彼女は、この映画を本物にしたかったのだ。夫との関係が『エール!』と違って赤裸々に描かれているのも、その一つなのだろう。

また家族関係についても、フランス版とは微妙に違いが見られ、より独立心が強く設定されている。こんなところも開拓精神に富んでいるアメリカらしい点と言える。
劇中での歌にも、伝統を重んじるフランスと、未来を切り拓こうとするアメリカの、それぞれの特徴が表れていて面白い。