お金と幸せをテーマにした作家本田健さんのポッドキャスト番組「Dear ken」
その放送で紹介された本の中で、読んだことのある本について書きたいと思います。
今回は、第335回の放送時にリスナーさんがオススメした『バビロンの大富豪 「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのか』です。
バビロンの大富豪 「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのか
受け継がれているお金の苦労と不幸な人生
お金に困らない生活をしたい、これは誰もがもっている欲求ではないでしょうか?それもできれば、楽をして。
しかし現実には真逆の人生を送り続け、いつも不満ばかりを口にしている。こんな人間って、実は現代に限ったことではなく、はるか昔から延々とい続けたようです。
そんな中にも、自らの力で富と幸福を同時に手に入れた人物が存在したことをこの本は教えてくれます。しかも小さな習慣で可能なのだと。
この本を知って以来、というか、はじめはオーディオブックで聴いたのですが、その面白さに引き込まれています。折に触れ何度となく聴き返し、そのたびに元気づけられもします。おそらくそんな人は多いだろうと想像します。
お金に悩まない人は昔もいなかった
登場人物の誰もがこの鬱屈した思いと、光を見つけようとする真剣さを持ち合わせています。一見、この相反していながらも人間味あふれる様相。
それはバビロンという遥か昔とは言わないまでも、作者がペンを走らせた今から100年ほど前の人間であっても、今と何ら違わずに悩んでいたんだなと想像させてくれます。
自動車、コンピューター、冷暖房などのように、暮らしぶりは豊かになっています。
しかし、こと経済観念と自己成長という側面でどうなんでしょう?もしかしたら、100年前から全く成長していないんじゃないでしょうか。
なにも禁欲と説いているのでありません。経済的な自立を指しています。働いても働いてもお金の苦労から抜け出せないのには、理由があるからだと。その最も端的な言葉が、”奴隷”という身分でこの本では言い表されています。
富とは力だ
バビロンでつつましやかに暮らす職人が「なぜこんなにお金に困ってばかりいるんだ」と自分の生活を振り返ることから大古の物語は始まります。そして助言を求めて、大金持ちになった旧友に会いに行きます。
ちなみに、バビロンとはこんな場所らしいです。
ちょっと分かりませんね。お金持ちも想像しづらいです。
こんなのではどうでしょう?
映画『イントレランス』に出てくるバビロニアです。本に登場するお金持ちは、王様にも物申せたようなので、こんな暮らしをしていたのかもしれません(知りませんが)。
さて、職人は旧友に尋ねます。「かつては自分たちと同じ暮らしをしていたのに、今では大金持ちになり幸せに暮らしている。何故だ?」と。
この差はどうしてなんだ?と疑問を抱けるって、とても素直な性格です。そして、会いに行くという行動ができる積極さ。ここに全ての出発点があるように思います。
賢人として登場する旧友が自分が成功できた秘訣をルールとして教えてくれます。その中に、こんな一説があります。
「富とは力だ」
奴隷とはお金に困り続けること
また、ほかにもこんな助言があります。
「収入の一割を自分のためにとっておく」
たとえ借金があったとしても、収入の一割は必ず貯金する。これを12回続ければ、10倍になる。こうして自分のためにとっておくことは、自立した精神を持たせてもくれる。
そしてある程度のお金ができたら、事業なら事業に・お金ならお金にと、その道に精通している相手と仲間になって資産を増やすようにと。
これは、現代でいうところのロバートキヨサキ氏の『金持ち父さん 貧乏父さん』と似ています(なかには相容れない助言もあります)。
お金に支配されるか、それともお金を支配するか。ようは、100年前から何ら変わりはなかったのです。お金に困るというのは、奴隷状態でしかないと旧友は言いたかったのです。
ジョージ・S・クレイソンはニューソート思想の一発屋芸人?
著者のジョージ・S・クレイソンは、このあと現代と古代を交える短編によって、さらにお金の困窮と、不幸から幸福への関係を物語っていきます。
その思想は、引き寄せの法則について書いているこの記事によると、ナポレオン・ヒルやウォレス・D.ワトルズ
と同様にニューソートに属するようです。
英語なので詳細は分かりませんが、”生き方と夢”・”人間の外と内”という二面を物語風に示したという点で、より読みやすくて親しみやすいと言えます。オグ・マンディーノの『世界最強の商人 (角川文庫)』に近いですね(こちらも面白い本です)。
また、本のあとがきによれば、この物語は作者の仲間に配られたパンフレットとして世に出版されたようです。
それを知ると、登場人物の知恵者が言う「一部を自分のためにとっておけ」という助言が、「小さなことからでいいから始めよ」という著者自身のメッセージを言葉の裏側に込めているようにも伝わってきます。
歴史の考証と空想の具現化という創作活動を、作品を配布するという行為で実践したその姿は、ビジネスマンというより、作家という芸術家そのものです。
他に何冊も本を残していれば、今ごろ自己啓発の大作家になっていたかもしれません。より広く顔も知られていることでしょう。でも、日本とアメリカのアマゾンでは、この1冊しか販売されていないようです。
こんなところ、今風の芸人で言えば一発屋に似ていませんか?
しかし、70年という時を超えて、国を超えて今なお愛読者を増やしていることを考えれば、その内容は歴史の重みに耐えたということで本物と言えるのではないでしょうか。
人間の変化を耳で聴く豊かさ
この小説は、先にも書いた通りオーディオブックとして聴くこともできます。
何度も聴いていると、一人のアメリカ人によって書かれた架空の話だと忘れて、あたかも本当にこんなバビロンが存在していたんだと錯覚してしまうほどです。
登場人物が思わずもらす嘆き、不満。そして、変わろうとする小さいながらも固い決意。一つ一つの台詞が豊かな感情という衣服を身にまとって、きらびやかに姿を現します。なんと豊かで贅沢な時間。
ふと繰り返し聴きたくなってしまうのは、彼らが何とか小さな光を見つけたように、僕もそれを見つけたい、そんな思いを持ち続けているからなのかもしれません。
Dear Kenのリスナーさんがオススメしていた、「人生に自信と勇気を与えてくれるストーリーです。読み返すたびに、新たな気づきが得られます」というコメントが、この本が長く広く愛されてきた証拠を端的に語ってくれています。
バビロンの大富豪 「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのか
感情豊かな登場人物の台詞と、細かな背景描写によって活き活きとしたバビロンの暮らしが広がる。
聴きごたえタップリなオーディオブックはこちらです。
バビロンの大富豪』 耳で読む本、オーディオブックFebe(フィービー)